その空間の”ひととき”を、最高の舞台に

その空間の”ひととき”を、最高の舞台に

有限会社フロレゾン花瞬 代表

Yoka Ashizawa

芦澤葉香

あらゆる「空間」のデザインや装飾、演出を手掛ける「有限会社フロレゾン花瞬」。その仕事は、ウエディングや各種イベント・パーティー、企業プロモーションのためのディスプレイなど多岐にわたります。さまざまな場所の“ひととき”を彩るこの仕事について、その想いやこだわりを、代表の芦澤葉香さんに伺いました。

Interview & Text by You OshimaPhoto by Kuniyoshi Taiko
Produced by FUBUKI

人々に喜び、そしてうるおいを与える仕事

人々に喜び、そしてうるおいを与える仕事

芦澤さんはもともと、「住まい」や「ライフスタイル」に興味がおありだったと伺いました。

芦澤
はい。そもそも「人生を楽しく生きる」ということが、自分自身のモットーだったんですね。楽しく生きるために大切なのは、心と身体のバランスをとること。そしてそのために必要なことこそが、日々の暮らしの中にある“豊かさ”や“うるおい”であると感じていました。充実したライフスタイルを叶えることと、「住まい」は切っても切り離せないもの――そう思っていたので、大学を卒業してはじめに就職したのは不動産会社でした。お客さまのライフスタイルに合わせた物件紹介や、リノベーションによる住空間のプロデュースなどをしていました。

その後すぐに広告代理店へと転身され、20代で独立されていますよね。早い段階で独立を目指したのはなぜですか?

芦澤
広告代理店時代、私の周囲には、自分の才能を発揮して活躍している女性がたくさんいらっしゃったんですね。その輝く姿を目の当たりにし、私も何か技術を身につけて「私だからできる仕事」を、個人の名前でしていきたいと思うようになりました。スタイリストや舞台美術、タイムキーパー――当時、さまざまなジャンルのプロフェッショナルが活躍していましたが、私は特に、スタジオ等の無機質な空間を一瞬にして華やかに彩る、フラワーコーディネーターの仕事に惹かれていったのです。

当初は、フラワーコーディネーターとして独立されたのですね。

芦澤
そうですね。独立に際して直接的なヒントを得ることができたのは、27歳の時の大親友の結婚式でした。私は彼女のために手作りのウェディングブーケをプレゼントしたのですが、新婦自身はもちろんのこと、そのご家族も本当に喜んでくださって。人の幸せの瞬間をお手伝いできること、こうして笑顔や感動を与えられる仕事であることを実感し、これこそ自分がやっていきたいことだと強く確信しました。

感性豊かなパートナーと、クリエイティブな「空間演出」を

感性豊かなパートナーと、クリエイティブな「空間演出」

現在では非常に幅広いお仕事を手掛けていらっしゃいますが、フラワーコーディネーターのお仕事から、どのように広げてこられたのですか。

芦澤
当初は広告代理店に勤める傍ら、週末だけウェディングブーケデザインの仕事をしていました。代理店を退職して独立してからは、ブーケだけではなくパーティー装飾も手掛けるようになりましたね。更にウエディング以外のオファーも増え、一般企業様のキャンペーンに伴うディスプレイデザイン、プロモーションイベントの演出、プロダクトデザインなど、フラワーコーディネートにとどまらない、総合的な「空間演出」のお仕事を任せていただく機会が増えていきました。

その過程で個人から法人へと業態を変えられたのには、何かきっかけがあったのですか?

芦澤
大手企業様からのお仕事を任されることが増え、プロジェクトの規模もかなり大きくなっていきました。そういうお仕事は、法人でないと契約できないことが多いんです。私自身も、1人ではなくプロジェクトで動くことの面白さを感じ始めていましたので、ビジネスパートナーと組んで最初の法人を立ち上げました。4年半で、社員も増員して拡大しましたね。

その会社を離れ、お一人で「フロレゾン花瞬」を立ち上げたのはなぜですか。

芦澤
企業組織を拡大していくことよりも、私はあくまでも「自分らしく」在ることを大切にしたかったんです。折しも今は、個々のパーソナルブランディングを重視する時代。ですから社員を雇用するのではなく、各分野のプロフェッショナルとして活躍しているクリエイターの方々を「パートナー」とし、プロジェクト単位でチームを組む形を選びました。感性豊かなクリエイターのみなさんと共に、フレキシブルに時流に乗りながら、常に新しいクリエイティビティを発揮していく――それが「有限会社フロレゾン花瞬」のスタイルですね。

空間の“パフォーマンス力”を、最大限に引き出す

空間の“パフォーマンス力”を、最大限に引き出す

「空間演出」という仕事について、その役割をどう捉えていらっしゃいますか?

芦澤
私たちがデザインや演出などを手掛けるリアルな場、空間というものは、その場を実際に訪れる人にとって、その人だけのストーリーが生まれる「舞台」になるんですよね。それはウェディング・パーティーの装飾でも、企業プロモーションのためのディスプレイでも同じことです。ですから私たちの使命は、この「舞台」の価値・パフォーマンス力を最大限に高め、最高の“ひととき”を提供すること。そして、お客さま一人ひとりの持っているストーリーを具現化し、喜んでいただくことであると思っています。

「花瞬」という社名にもあるように、「ひととき」「瞬間」という視点を大切にされているのですね。

芦澤
そうですね。やはりリアルな空間で体感する「ひととき」は、その場に行かないと得られないものですからね。私たちが表現のモチーフにしている「花」も正にそうです。花は見た目が美しいだけではなく、その瞬間に発している香りや質感、あふれる生命力などによって人の五感を刺激し、心にうるおいを与える“表現者”なんです。
また、日々少しずつ移り変わっていく季節の要素も大きいですね。特に日本には、それぞれの四季で、そのときにしか体験できない瞬間がたくさんあります。「間」や「わびさび」といった日本の伝統も同じです。そういう日本の心を大切にしていきたいという気持ちもあり、自分自身、常に一つひとつの瞬間を大切にするという生き方をしています。

プロとして、“結果”にこだわる姿勢を強化

プロとして、“結果”にこだわる姿勢を強化

今後、力を入れて取り組んでいきたいと考えていらっしゃることはありますか?

芦澤
空間を最高のものにして、そこを訪れる人に喜んでいただく、というのが私たちの大切な使命なのですが、私たちにはプロフェッショナルとして、もう一つの役割があると考えています。それはコストパフォーマンスを意識し、結果を出していくということ。特に企業のプロモーションに関わるお仕事では、お客さまに結果をもたらす、費用対効果の高い提案をしていく必要があります。今後は更にこの点を意識し、お客さまにご満足いただけるようなサービスを提供していきたいと思っています。

それでは最後に、将来的に達成したいことを教えてください。

芦澤
独立前からずっと大切にしていること――日々の暮らしやライフスタイルに豊かさやうるおいを与える――は、今でも変わっていません。今まで携わってきたさまざまな空間はもちろんのこと、将来的にはライフスタイルカフェのプロデュースなども手掛けていきたいと考えています。リアルな場で生まれるあらゆるコミュニケーションを通じて、それを実現できるような空間づくりを追求していきたいですね。

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